骨盤臓器脱

膣から骨盤内の臓器が出ることを骨盤臓器脱といいます。
大きく分けて膀胱脱、子宮脱、直腸脱があります。

ここでは婦人科で問題となる「子宮脱」を説明します。

①子宮脱とは

子宮脱とは、「子宮が外陰部から外にはみ出している状態」のことです。
子宮脱になると、外陰部の違和感を訴える方が多くなります。
典型的には、それまで無症状だった方が、運動や咳き込んだ後に外陰部の違和感を持つようになります【初発症状】。
また、尿漏れや尿が出しにくい感じといった排尿にまつわるトラブルもあります。子宮が出っぱなし状態となると衛生的にもよくありません。

②子宮脱の発症年齢と原因

分娩に伴う子宮周囲の靭帯のゆるみは最大の原因ですが、分娩後すぐに発症することは少なく、ほとんどの方は閉経を迎える頃から60歳代にかけて起きます。
慢性的な咳や便秘、仕事などで日頃から重い荷物を持っている、肥満体系の方などは、腹圧がかかりやすいため、子宮脱になりやすいといわれています。

③子宮脱の程度の関するステージ  ↑上図

子宮脱は、程度によってステージ1から4に分類されています。
ステージ1は子宮の先端が膣口から-1cm以内に治まっている状態で、この場合ほとんど無症状です。
ステージ2は子宮が膣口から-1cmから+1cmまで飛び出す状態です。
ステージ2になるとほとんどの人が下腹部に違和感を覚え、排尿症状や排便症状なども伴うようになるため、治療の対象となります。
ステージ3は膣口から+1cm以上出ているが全部出ているわけではない状態。
ステージ4は子宮が完全に出ている状態です。

④治療

子宮下垂(子宮は下がり気味だが外陰部から出てはいない状態)の場合、生活習慣の改善や骨盤底筋体操を行えば手術や器具を使わずとも改善がみられますが、子宮脱まで進行している場合には、「フェミクッション」「ペッサリー」もしくは「手術療法」で治療する必要があります。

1.フェミクッション(上図) 

=外陰部に当てて子宮が出てくるのを抑える器具。クッション+ホルダー+サポーターを組み合わせて使用し、洗って何回も使用する。手術を希望しない、リングペッサリーが合わない方(痛みや出血のため装着が不可能、膣口が広くリングペッサリーが落ちやすいなど)に適応があります。

2.子宮脱用ペッサリー(いわゆる子宮脱リング)↑上図

日本で使用されているものはリング状ペッサリーで、使用素材の違いにより軟らかいものと硬いものがあります(柔らかいものが使いやすいと個人的に感じます)。リングペッサリーは帯下の排出、装着のしやすさなど優れた点がありますが、膣口がとても広い場合や子宮摘出後の症例では対応できない場合もあります。

外来で医師が挿入し、以後は1か月後、3-4か月後、半年ごとに外来診察が必要です。帯下が増加することがあり、その臭いなどに困惑する方もいます。長期的にはペッサリーによる腟壁びらんを生じやすく、放置状態が続くとペッサリーが腟壁へ陥入して、ペッサリーの切断除去を必要とする場合があります。

3.手術

手術療法には(A)『経腟的な修復術』と(B)メッシュ(補強材)を用いた『腹腔鏡下仙骨膣固定術』とがあります。

  (A)経腟的な修復術(native tissue repair : NTR)

最も多く行う術式は、「腟式子宮全摘術」及び「前後膣壁形成術」です。脱出した子宮を牽引し経腟的に摘出します。その上で膀胱腟中隔(筋膜)を縫縮し前腟壁を補強し、左右の肛門挙筋を用いて後膣壁を補強します。また、子宮摘出後の患者さんには、筋膜と肛門挙筋を用いた形成術のみを行うこともあります。

なお、子宮を摘出して膣壁を縫い縮めても、その後ある程度時が経つと膣壁が出てくることがあります(膣断端脱、小腸瘤)。

(B)腹腔鏡下仙骨膣固定術(laparoscopic sacrcolpopexy)↓下図

腹腔鏡下で、おなかの中から膀胱と膣の間にメッシュを入れて仙骨に引っ張るように固定する方法です。特に性機能の温存を希望される方には良い適応です。手術は全身麻酔で行い、多くの場合約3~5時間で終了します。お腹の中の癒着などのためさらに長時間を要することがあり、場合によっては開腹手術に移行する場合があります。

             

当院で勧めているのは2.子宮脱用ペッサリーです。これまでフォロー経験豊富。ご相談ください。

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